2018年12月26日水曜日

米国通商代表部(USTR)による「日米貿易交渉の目的の要約」

2018年12月21日、米国通商代表部(USTR)は、来年早々にも交渉開始となる日本との貿易交渉「日米貿易協定」について、交渉目的の要約と題された文書を公表した。

すでに本ブログ「着々と日米貿易協定の準備を進める米国」でも紹介したように、9月下旬の日米首脳会談以降、米国はパブリックコメントの実施や、それに基づく公聴会など国内的な準備をこの間進めてきた。これらの結果をまとめたものが、今回出された「交渉の目的の要約」となる。ちなみにこの「交渉の目的」は、2015年大統領貿易促進権限(TPA)法に則った手続きでもある。TPA法は通商交渉開始の30日前までに、各交渉分野について包括的で詳細な交渉目的の公開を義務付けている。つまり12月21日から30日後の2019年1月20日以降に交渉が開始できる状況が今回、作り出されたということである。

「交渉の目的」は、全17ページからなり、以下の22の分野・項目が挙げられている。日米首脳声明後に、日本政府は「この交渉は物品交渉に限るもので、名称はTAGという」と強弁してきたが、改めて、少なくとも米国側にはそのような認識はないことが明らかになった。22分野・項目のほとんどすべてはTPP協定と重なるものであり、また米国がNAFTA再交渉時に掲げた「交渉の目的」ともほぼ一致している。つまり、包括的な貿易協定を前提としているものである。

・物品貿易
・衛生植物検疫措置(SPS)
・通関・貿易の円滑化・原産地規則
・貿易の技術的障壁(TBT)
・良い規制慣行
・透明性・公表・運営
・サービス貿易(通信・金融を含む)
・デジタル貿易・国境を越えたデータ移動
・投資
・知的財産
・医薬品および医療機器の手続き上の公平性
・国有企業(国の統制を受けた企業も含む)
・競争政策
・労働
・環境
・腐敗対策
・貿易救済措置
・政府調達
・中小企業
・紛争解決
・一般的規定
・為替


USTRが「交渉の目的」を公表した後、私はまずはこの文書の翻訳を行った。この文書からは、WTO、TPP協定、そして新NAFTA(USMCA)や韓米FTAなど、米国の通商交渉での要求と実現してきた内容の変遷が読み取れる。また日本に今後要求されるであろう内容は具体的に記載されていない項目もあるが、TPPや新NAFTAの内容と照らし合わせると、これからなされるであろう要求がかなり具体的に浮かび上がってくるものもある。個別分野についての詳細な分析・解説は引き続き発信していきたいと思うが、まずは翻訳文を公開する。





0 件のコメント:

コメントを投稿