2013年6月29日土曜日

日本政府によるTPP交渉官(各分野)の発表内容

日本政府は本日、TPP交渉参加を前提に、すでに決まっていた首席交渉官のもとに、各分野の交渉官を発表した。マスメディアでは首席交渉官代理の大江氏の名前は発表されていますが、各交渉官の氏名までは報道されていないようですが私は独自ルートで詳細入手しました。たぶんどこよりも早いリーク情報だと思います(間違いや後の修正があればすぐいたしますが、現時点でのご参考に)。

首席交渉官 鶴岡公二(外務審議官)
首席交渉官代理 大江博(外務)

以下、交渉官(7月1日発令)
・上原研也(外務)は「協力と分野横断的事項」
・牛草哲朗(農水)は「環境」
・大塚和也(外務)は「競争政策」
・加藤淳(外務)は「制度的事項と紛争解決」
・金森敬(財務)は「貿易円滑化」
・黒田淳一郎(経産)は「TBT」
・杉原大作(外務)は「投資」
・田公和幸(外務)は「政府調達」
・辻山弥生(農水)は「SPS」
・原田浩一(厚労)は「労働」
・林禎二(外務)は「物品の市場アクセス」
・樋口恵一(外務)は「原産地規則」
・彦田尚毅(外務)は「知的財産」
・菱田光洋(総務)は「電気通信」
・股野元貞(外務)は「越境サービスと一時的入国」
・水野政義(農水)は「物品の農業の市場アクセス」
・吉澤隆(経産)は「電子商取引」
・渡部康人(金融庁)は「金融サービス」
・あと1人は経産省で人選中で「鉱業の市場アクセス」

2013年6月12日水曜日

米国企業による日本へのすさまじい要求―TPP米国パブリックコメントを読み解く①


 米国政府は57~69日の間、来たるべき日本のTPP交渉参加に向けて、米国内向けのパブリックコメント(意見募集)を行なった。設定された問いは「日本のTPP参加について」そのものである。9日の締切前から、寄せられたコメントは少しずつ公表されてきたが、締め切り直後の時点で確認できたのは64件。業界別に見れば農業・食品関連業界が多かった。

 私はここに寄せられた各企業や業界団体からのコメント、つまり「日本に対する要求」を読み、身の毛がよだつ思いがした。ここまで要求するか、といわんばかりの内容がズラリと並んでいるからだ。その中には、日本が長年積み上げ構築してきた独自基準や制度、また文化・社会的背景に裏打ちされているものも含まれる。消費者運動や住民運動の努力によって勝ち取ってきた内容もある。しかし米国企業は、「そんなものは自分たち企業・業界団体の利潤獲得のためには無意味であり『障壁』であり、有害だ」と主張しているのだ。これほどに屈辱的なことがあるだろうか。

もちろんこのような要求自体は、今に始まったことではない。だがこれまでと異なるのは、明らかに、日本のTPP交渉参加は「秒読み段階」に入ってしまったという点だ。日本市場を狙う企業の「意欲」もますますヒートアップしているように思えてならない。まさに「今まで離れていた獲物が、今はもう眼の前にいる」という状態なのだ。


★日本の「聖域」などは関係ない 相次ぐ関税撤廃要求

 まず、米国の主要農産物・食品輸出業界団体の要求内容をピックアップする。

 ●米国食肉輸出協会:関税撤廃
 ●全米豚肉生産者協会:差額関税制度の廃止
 ●全国生乳生産者連盟・米国乳製品輸出協議会:チーズなど乳製品の関税撤廃、食品添加物の認証手続きの迅速化、他国で使用されているが日本は認めていない添加物の使用拡大
 ●米国ジャガイモ貿易同盟:残留農薬基準の認証手続きの迅速化
 

 豚肉、乳製品は日本政府が「聖域5品目」として掲げた産品である。しかし米国の輸出業界にとってはそのような「聖域」などはまったく関係ない。徹底的な関税撤廃をひたすらに要求していることがわかる。

 また日本の「安全・安心な食」を支える重要な基準・制度である食品添加物の規制や、残留農薬基準もやり玉に挙げている。それらをすべて取っ払って、米国産の農産品を輸入しろ、と言っているのだ。これらは関税そのものではなく、いわゆる「非関税障壁」の部分にあたるが、当然、今後進められるであろう大問題の「日米並行協議」におけるテーマに挙げることが前提とされていると見られる。

★食糧メジャー・カーギルの主張

 農業・食品分野での個別企業では、カーギルもコメントを寄せている。

  同社は、まず日本が2月の日米共同宣言にて、日本が「すべての品目を交渉テーブルに乗せると約束したこと」、「包括的でハイレベルの合意を達成するために参加すること」をわざわざ明記した上で、「日本のTPP参加を歓迎する」としている。また長年の課題であった「日本の非関税障壁」問題も解決させるという趣旨も書かれている。

 同社にとって、日本の参加は、日本の市場進出だけにとどまらず、「アジア太平洋地域への自社生産物・製品のさらなる展開のステップ」として位置づけられている。同社はすでに66か国で142万人の社員を雇用し、130か国以上に農産品や原材料、サービスなどを提供しており、TPP参加国のオーストラリア、ペルー、シンガポール、ベトナム、マレーシア、カナダ、メキシコ、そして日本とほとんどの国へ投資を行なっている巨大な多国籍企業である。

「日本は長らく、世界でも最も閉鎖的な市場であったが、TPPによって開放される。それは日本の農業セクターの国際市場における競争力を高めることになる。それによって日本の農業セクターはより『市場主義的な農業』へとシフトすることができ、包括的で持続的な経済成長への道となる」。

 当然、同社は日本の関税を攻撃している。また関連する事項として、SPS(植物検疫)やTBT(貿易の技術的障害)についてもTPP交渉の中で解決しなければならない、という。特に食品に関する「非科学的な根拠に基づく規制・基準」はなくせ、との主張は重大だ。各国で定めている基準が不一致であれば輸出入に時間もかかり、コストも生じる。だからいわゆる「内外規制の一致」をはかれ、と言っているのである。この主張を米国基準のまま日本に導入したとしたら、食品表示や添加物、残留農薬基準など、日本が長らく構築してきた国内基準やルールがすべて消失させられてしまう。
 同社は、日本の参加は「自社の利益、米国経済の発展に貢献する」と、臆面もなく展開する。しかもそれが日本はもちろんアジア太平洋地域での食糧の安全保障に有効であるとまでいうのだから、言葉も出てこない。

★米国最大級の外食チェーン「ヤム!」社の主張

「ヤム!インターナショナル」は、ケンタッキー・フライドチキン、ピザハット、タコベルを傘下に持つ全米最大級の外食チェーン持株会社だ。私はつい先日、ツイッターで、米国のパブコメに寄せられた意見のうち、「ヤム!インターナショナル」社の例を発信した。ここでも改めて紹介したい。

同社はすでに日本に約1500店舗を有しているが、今回のパブコメで挙げた日本の加工食品貿易の「障壁」を除去すれば日本の店舗を「大きく拡張できる」と主張している。

 ではヤム!社がいう日本の「障壁」とは何か。生チーズ、加工チーズ、細切りモッツァレラチーズ、繊維状チーズおよびその他の加工チーズの関税が「高い」という。「チーズはピザの生産コストの大きな比率をなし同社と顧客にとり重大なコストになっている」から、関税を撤廃しろと。

チーズだけでない。冷凍未加工部分鶏肉、未加工冷凍鶏もも肉、その他部分肉、冷凍ポテトフライ、調理済スイートコーンも「日本の関税は高いから撤廃せよ」。これらの関税が撤廃されれば米国生産者からヤム!社日本レストランへの製品輸出は数千万ドル増えると、同社は見積もっている。

さらにヤム!社の要求は関税撤廃にとどまらない。「日本に、月齢その他の制限なしにあらゆる米国産牛肉の輸入を認めるようさらに圧力をかけるよう要請する」、「日本には食品添加物について『不透明な規制』があり出荷を遅らせている」等々。とにかく「米国生産車・業界・企業がいかにビジネス拡大できるか」が徹底的に述べられている。 

このように凌辱的で、倒錯した主張があるのだろうか、とつくづく疑問と怒りを感じる。

チーズや冷凍ポテトフライ、鶏肉、調理済スィートコーンの日本の関税が撤廃されてもケンタッキーフライドチキンやピザハットの値段は1円も安くならないし、従業員の賃金は1円も上がらないだろう。関税撤廃分で生じた仕入れコスト減少は全て米国企業の利益となるのだから。

日本のTPP参加は、すなわち日本農業の破壊を意味する。ごく一部の高付加価値・輸出型農業は生き残り利潤を上げるかもしれないが、しかしそれは国家の食糧主権を守り国内の人びとの胃袋を満たす本来の「農業」ではない。しかも日本の農業を破壊する主体はまさにカーギルのような食物メジャーそのものである。カーギルはじめ米国企業は徹底的に日本に安い農産品を売りつけながら、日本の農業を破壊しながら、「TPPで日本の農業は国際競争力をつけられる」というのだ。そもそも、日本の農業が国際的に競争力をつけた場合に、困るのは米国企業自身ではないのか。

とにかく、米国企業にとっては「日本の市場でモノを売ること」が重要であり理屈はどうでもよい、と理解するしかない。

 まさにTPP交渉参加が秒読みといわれる現在、日本は相変わらず要求されるだけで、何かを要求することなどできていない。私はもちろん日本のTPP交渉参加そしてTPP協定自体に反対であるが、このすさまじい米国企業の要求を前に、日本政府はどのような方針で、具体的に何を獲得するために交渉に臨もうとしているのか。少なくとも、ここで紹介した企業が具体的に要求しているようなレベルと同等の要求を日本が他国(特に米国)にしているのであれば、まだ「交渉」の体をなす可能性もある。しかし政府や日本の大企業、推進派からは、「TPPで勝ち取るもの」の具体的項目と試算は出てこない。仮に「TPPで経済成長」というのならせめてこれと同等の数値を出すのが筋だろうと改めて思う。

 私はいま、TPPを知り、語る上で必要なのは、「事実」をできるだけ多くの人の目にさらすことだと考えている。極度の秘密性を持つTPP交渉の本当の姿を、私を含め誰も知らない。条文テキストは政府も読んでいないのだ。だからこそ、誰が、何を、どのような目的を持って実際に語っているのか、小さな「事実」であっても、そこから本質が見えてくることも多い。今回紹介した米国のパブコメも、そうした「事実」の一つである。米国企業のすさまじい要求と、むき出しの利潤追求の姿を見て、「それでもTPPに入りたい」と思えるだろうか。メディアの方にもぜひこうした「事実」の報道を粘り強くやっていただきたいと切に願う。
 

 今回は米国のパブリックコメント結果から、主に農業・食品産業分野について紹介したが、引き続き保険や自動車業界、流通などの分野での米国企業・業界団体の「要求」を随時紹介していきたい。

 

 

2013年5月30日木曜日

リマ会合では何が決まったのか、何が決まらなかったのか―やはり危険な日本の参加


 524日、ペルーの首都・リマでの第17TPP交渉会合が終わった。

 私自身は、シンガポール交渉会合と同様、米国NGOパブリック・シチズンのメンバーとしてステークホルダーに登録し、517~23日まで現地に滞在した。

 TPPに関心を持つ多くの日本の人たちや日本のメディア、そして何よりも日本政府や財界にとって最も注目されたのが、「次回会議日程」と「日本がどれだけ参加可能か」だっただろう。すでに交渉最終日の記者会見で発表されたとおり、「715~25日、マレーシアにて」である。日本の参加は、米国議会承認を得られる最短の23日ないしは24日からの2,3日ということになる。

 

 前回のブログで書いたとおり、日本政府はこの間、一日でも長く交渉参加できるよう、熱烈なラブコールを各国政府に送ってきた。しかし、現地で私が情報収集した限り、交渉官たちはその要望にまともに応えようとしてはいなかった。もちろん「日本が参加すること」は全体として歓迎しているというニュアンスだったが、すでに内々で決まっていた日程を大幅にずらしたり、また会期を延長してまで日本の側に立つ義理も温情もない、という印象だ。要は「日本には7月の交渉参加という形式は与えるが、実質的には9月に来ればよい」ということなのだ。


交渉会場の超高級ホテル、マリオット(リマ)
 私は当初、「それでは9月に日本が、すでに多くが決まっている交渉内容にただサインをするだけではないか」と感じた。しかし3月以降からの交渉自体の進展を見ていると、またペルーで交渉官やNGOの仲間たちと情報交換を進めているうちに、必ずしもそのようなシナリオが成立するわけではない、と思い至るようになった。

 日本では、マスメディアはもちろん、反対運動にかかわる人たちの間でも、「TPP交渉自体がどうなっているのか」ということへの把握と分析がまだ弱いように思う。もちろん日本はまだ交渉に参加しておらず、またそもそもTPP交渉自体が秘密である。さらにいえば言語の問題もあり(膨大な英文の情報を読むこと自体相当時間もかかる)、仕方ない面もある。しかし交渉の流れ自体を読み解いていかなければ、反対運動もロビイングも、ましてや自国・他国の交渉官に市民社会の声を十分に伝えていくことも難しい。

 

★交渉はどこまで進んだのか?

  さて、リマ会合での進展について。
 3月に開催された第16回シンガポール交渉を受けて、USTRは以下の4つの分野についてはテキストの確定というレベルまで作業が進んだと発表した。

*制度間整合性(制度的事項)regulatory coherence
*税関(貿易円滑化)
*協力(開発)development
*電気通信サービス 

 各種の情報によると、リマでは、これに加えて以下の分野にそれなりの進展があったと思われる。少なくとも大枠合意、分野によってはテキストの作業も完了という意味である。

 *投資
 *越境サービス貿易
 *電子商取引
 *金融サービス 

 この状況を、「ここまで進んだのか」と見るのか、「まだここまでしか進んでいないのか」と見るのか。私を含む国際NGOチームの見解は、後者である。TPPには24の分野がある。仮に上記がテキストレベルまで完成していたとしても、まだたったの8分野。3分の1である。しかも、上記のような形で「作業化」できる分野というのは、全分野のうち比較的「もめていない」分野である。

 一方、TPP24分野の中には、実はもう歩み寄りが不能というほど深刻な遅滞をもたらしている分野がいくつかある。まずは「知的財産」だ。米国が1年以上も前に素案を出したとたん、それがあまりにも米国と大企業に都合のいい内容だったために、ほぼすべての他国が一致して交渉を拒否したという経緯がある。もし本当に10月妥結を目指すのであれば、知財分野における合意は不可欠だ。そのこともあってペルーでは知財分野の交渉に最大の9日間が割かれていた。しかし、終了した時点で大きな進展はなかったといわれている。知的財産には医薬品の特許問題から、インターネット上の表現と著作権問題、各種のコンテンツの権利など幅広いテーマが含まれている。もちろん米国は製薬会社やコンテンツ産業などの圧力も受けていて、企業側の知的財産権を最大限に保護したいと思い続けているのだが、それは他国(例えばエイズ患者を多く抱えるマレーシアやベトナム)にとっては受け入れ不可能である。米国対他国という対立は深刻なまま残っている。

 他にも、「懸案の分野」として、国有企業の問題、環境、繊維・衣料、そして農業分野における米国との個別交渉などがある。結局、これらは解決されずにリマ会合は終了した。

 NGOの間では、「もし本気で10月妥結を目指しているのであれば、今回のペルーでは相当に本腰を入れ交渉が繰り広げられるはずだった。しかし実際には、予想していたほどの切迫感も緊張感も交渉官からは伝わらず、いささか驚いた」という意見が比較的多い。確かに、感覚的なものも含めて、私自身もそう感じた。
 

10月妥結はあり得るのか? 

 では本当に10月の妥結というのはあり得る話なのだろうか。現地の交渉官や各国の業界団体、そしてNGOなどの声をまとめると「無理だろう」という意見が多かった。会期中、一日だけ持たれる「ステークホルダー会議」では、各国の首席交渉官が広い部屋にズラリと並んで座り、それに私たちステークホルダー約200名が、何でも質問していい時間帯がある。200名のステークホルダーに対する会見というイメージだ。

 ここで国際NGOたちは次々と質問をする。私自身は、このスケジュール問題について聞いてみた。「交渉はまだ10月妥結を目指しているのか」「もしそうならば、おそらく技術的な作業で済む分野と、政治的なレベルで解決しなければいけないものの2つに分かれるのではないか」「10月の時点でそれらの合意も達成できていなければ、どのような発表を行なうのか、またその後のプロセスはどうなるのか」という趣旨である。

 答えは、もちろん「公式見解」だ。「当然10月を目標にしている。遅くても年内だ」と答えたし、その他の質問についてもとても抽象的な回答しかない。しかし会見後に何人かのステークホルダーと話したのは、「交渉官はこの交渉から、『10月を目指す』といいながら、『遅くとも年内』というような補足を言い出した。会見の場面だけでなく、その他の場面でも同じ。これは交渉が遅滞していることを物語っている」ということだ。確かにそうだと思う。そんなムードを感じ取ったのか、ステークホルダー会議の翌日には、参加各国の財界・ビジネスグループが交渉官に対して、「一刻も早く交渉を妥結するように」という強い要請文を提起した。TPPで旨味を得られる財界にとっては、延々と交渉が長引くことは大きなデメリットだからである。

 実際に、TPP交渉自体はすでに始めてから3年間が経過している。2~3カ月に一度、参加国の交渉官は太平洋に面する国々を行き来している。当然、時間もコストもかかる。そこまでのことをしてもまだ決まらない交渉に、シンガポールなどは「これ以上長引けば続けていくのも難しくなる」との声をあげているという。

 しかしだからといって、交渉がすぐに反故になるかといえばそんなことはない。特に米国にとっては、ここでTPPが頓挫しようものなら、貿易だけでなく安全保障の面からも、対中国戦略という意味からも、すべてのプランが水泡に帰してしまう。そんなことを決して許すわけはない。そうなれば、私たちが警戒しなければならないのは、何としてでもTPPを早期にまとめたい米国などが、通常の交渉以外にもあらゆる手を使って交渉の中身をまとめ上げていくことだ。例えば、先に挙げたいわゆる「懸案イシュー」については、業界からの圧力も強まり、他国に対して政治レベルの決着をはかってくるかもしれない。また日本の参加に関しても、問題の「並行協議」も使いながら、とにかく米国にとって不利益なないようにと(もう十分に譲歩しまくっている内容を勝ち取っているのに!)、自動車分野やあらゆる非関税障壁について迫ってくることもあるだろう。 

★年内妥結と「日本からの最大限の譲歩」の両方をめざす米国

 そして、実はもう一つ、米国を中心とする参加国が、交渉をスムーズに進めようと考えている重要な動きがある。

 リマ会合が終了した524日、USTRはいつものように交渉の進展結果についてのプレスリリースを発表した。このプレスリリースの全文および仮訳は、私も加わる「政府と市民の意見交換会」に各種情報リソースとして掲載されているのでそちらを参照されたい(リンクは⇒こちら)。

 まずこの発表自体は、現場に足を運んだり日々情報を収集している私たちからすれば、「大本営発表」そのものである。タイトルは「TPP交渉は力強く前進し続けている(Trans-Pacific Partnership Negotiations Maintain Strong Momentum)」とある。先述の私たちの分析とは真逆の評価である。個別分野の進展についても、「交渉担当者達は、(TPP)協定全般にわたる前進をつくりだした。複数のサービス分野、政府調達、SPS基準、貿易救済、労働、紛争解決といった各分野の交渉グループは、著しい作業の前進をつくりだした。また、これ以外の分野でも、TBT、電子商取引、原産地規則、投資、金融サービス、知的財産、透明性、競争、環境の各分野では、テキストレベルの作業を成功裏に前進させることができた。とりわけ知的財産・競争・環境は課題の多い分野であったが、交渉担当者達は実りある議論をおこない、次のステップに向けて作業を継続することを合意した」とある。これも、我々の評価とは大きく異なる。

さらに、「工業製品、農産品、繊維・衣料品、サービス・投資、政府調達のアクセスを約束する包括的なパッケージをまとめる作業でも、さらなる前進がつくりだされた。関税のパッケージと原産地規則のルールづくりにおいても前進があった」とまで書かれると、唖然としてしまう。このプレスリリースは、「ほぼすべての分野が大きく進展し、10月合意まではあとほんの一歩!大丈夫!」と必死に言っているようだ。しかしここまで大きく出られると、多くの人が「いくら何でもそこまで進んではいないだろう」と、逆に猜疑心を持ってしまうと私は思う。

5月19日、ステークホルダーからの質問に答える交渉官
プレスリリースの最後には、交渉を進展させるための「最善の方法について、ステークホルダー達から提出された意見や要望も反映された」と書かれてある。これは実感を持って違う、と言いたい点だ。「ステークホルダーからの意見や要望」というのは、個別のプレゼンや会話というチャネルもあるが、大きくは先述の「ステークホルダー会見」のことを指している。フロアから次々と専門的かつ幅広い質問が出されたが、私たちが期待していたような意味のある答えはほとんど返ってきていない。そればかりか、予定では「2時間」とされていたこの会見は、フロアにまだ十数人も質問希望者が手を挙げているにもかかわらず、1時間10分くらいが経過した時点で、突然「終了」となったのだ。これにはステークホルダーも閉口し、「まだ質問者がいる」「時間はまだ残っている」と声を挙げたが、一方的に閉会されてしまった。声を聞くという時点でこの様子なのだ。これで、「ステークホルダーたちの意見や要望が反映された」とは決していえない。

もちろん、こうした種類のプレスリリースは当然公式見解であり、過度に「意味ある内容」を期待するのは無理なのかもしれない。しかし、である。限られた情報しかない中で、わずかだが各国政府が発表した資料には、必ずどこかに「隠された意味」があると私は考えている。これら文書を様々な視点から何度も読みかえしてみると、思いがけない「真意」や「含意」に気づかされることがある。前回ブログで発表した「日米事前協議の合意文書」の不一致問題も、そうした問題意識からだ(この文書の不一致はあまりにもあからさまだったので誰でもすぐにわかることだが)。

今回のプレスリリースに関しては、重要な内容、特に日本にとって問題となる箇所がある。一番最後のパラグラフである。

TPP諸国の閣僚達は、今後数ヶ月にわたり、交渉担当者達の作業を導き、懸案となっているセンシティブな問題についての解決策を見出し、TPP首脳の目標である(TPPという)高い質の野心的かつ包括的な協定を、交渉担当者達が年内に実現することが確実となるよう、定期的な関与を続けていく。他方、それぞれの交渉チームは、このリマ会合で到達した前進が継続し得るよう、次回会合までに詰めの作業をおこなうことを合意した」。

このことは何を意味しているのか。最後の数行に注目したい(赤字部分)。

5月末に来日していたパブリックシチズンのロリ・ワラックさん、ニュージーランド・オークランド大学教授のジェーン・ケルシーさんらとの分析と議論を行なった結果、ここには次のような意味があるという。

つまり、日本が実質的に交渉参加する9月までの間に、日本が参加することで生じるいくつかの懸案事項(=日本が今後主張してくるであろう分野・内容)を米国はあらかじめ見越して、交渉会合の間の期間に行なう「中間作業(中間交渉)」にて、日本が参加してくる前に各国の間で「片をつけてしまおう」という約束を取り付けたのではないかというのだ。すでに知られているように、日本は交渉参加するまで、一切のテキストを見ることはできない。すでに決まったテキストについては、文言の修正も再協議の提案もできない。だから米国は、日本との関係で問題になる分野を絞り、少なくとも7月下旬に日本が入ってくる前までに、中間作業を集中的に行なってテキストを完成させたいと思っているということだ。

もちろんこれは、私たちの持ち得るさまざまな情報をベースにした「分析と予想」であり、真実は相変わらず闇の中である。が、遅くとも年内妥結をめざし、かつ同時に日本から「奪えるものは最大限奪いたい」と考える米国の意図から敷衍していけば、この見方にはかなりの説得力がある。

問題は、私たちの側がどうするのか、何ができるのか、という点だ。私たちは単なる情報収集者でも分析者でも評論家でもない。これらの結果や予想をふまえて、国内で、国境を越えて運動をつくり、実践するのが私たちのやるべきことだ。ぜひ多くの方々とさらに運動を広げ、複雑かつ密室の交渉に対抗していきたい。
 

(付記)この原稿を書くにあたっては、国際NGOの仲間たちの情報と知見、また国内の運動の仲間たち(とりわけ市民と政府の意見交換会を2年前から共に開催してきた「TPP意見交換会全国実行委員会」メンバー)からの有益な情報や翻訳に多くの助けをいただきました。感謝。



 

2013年5月21日火曜日

「交渉を急げ」―圧力をかける各参加国&日本の財界


17TPP交渉会合が行なわれているペルー・リマに来ている。
まとまった内容はまだ書けないが、ツイッターでは伝えきれない情報は速報的にブログに掲載していきたい。

 私自身は、前回のシンガポール交渉同様、長年交流のある米国NGO・パブリックシチズンのメンバーとしてステークホルダー(利害関係者)として登録、参加している。日本からの登録者は私一人だけである。他の団体からもリマに来ているが、登録はできていないのでステークホルダーには入れなかったようだ。また日本のメディアも何社か来ている。

 日本はまだ参加国になっていないため、微妙な立場ではあるのだが、国際NGOの一員として交渉官や他のステークホルダーに日本の参加問題や交渉全体の進み具合について情報を聞き出す努力をしている。また、日本においては安倍首相が「TPP参加表明」をしたものの、自民党内にも反発があるばかりか、公約破りの責任を問う声や全国各地でさらに森がる反対運動など、決して「参加表明」はすべての者の意思ではないこと(むしろ安倍政権の暴走であること)を、交渉官やステークホルダーに伝えることも目的にしている。

 
 さて今日は急ぎ、交渉が行なわれている裏で、参加各国の財界と、日本の財界がTPP交渉そのものにかけている圧力についてお伝えしたい。

 TPP交渉会合には毎回、ステークホルダーとして大企業が登録し参加していることはシンガポール交渉後の報告でも述べた。今回はどうなのか。ステークホルダーの数自体は現時点でははっきりわからないが、会場で用意されていたネームタグの数などから推察するに約200~300人だ。また団体・企業数もまだ公表されていない。が、いずれにしても大企業が多数参加していることは事実である(詳細後日)。

 19日のステークホルダー会議の翌日の20日、米国商工会議所や、米国貿易緊急委員会(ECAT)、APECのための米国ナショナル・センター、カナダ農産物輸出連合、ペルー外国貿易協会(COMEXPERU)、ペルー企業連合会議(CONFIEP)、ニュージーランド国際ビジネスフォーラム、シンガポールビジネス連合、チリ産業連合(SOFOFA)、アジア太平洋商工会議所などが各国交渉担当者との「ビジネス会議」と呼ばれる場を持った。まさにTPP参加国の財界・業界団体が一堂に会した会議だ。もちろんこれら企業はTPPを強烈に推進している。多くがステークホルダー会議にも登録している企業・企業連合だ。

 この場で、この企業連合群は交渉官に対し「TPP交渉を今年中に妥結するよう求める」という趣旨の要請を出した(註1)。

 ペルー外国貿易協会の会長は、「アジア太平洋地域における我々の国々の経済成長と、雇用創出はビジネスグループにとって最も優先度の高い課題です。TPPはその課題解決に大きく貢献するでしょう。TPPの妥結が早ければ早いほど、TPPによる利益も早くもたらされます。私たちはTPP交渉の妥結を早急に求めます。特に、懸案となっている重要イシューの解決と、もうすぐ参加することになる日本への対応について、充分に取り組んでいただきたい」と述べている。

 カナダ農産物輸出連合のキャサリン・サリヴァン氏は、「我々、TPP交渉参加11ヶ国における『交渉パートナー』は、日本のTPP参加を支持しています。日本の参加によって、アジア太平洋地域の経済規模はさらに大きくなり、この地域での自由貿易は推進されます」

と述べた。さらに、「TPPは日本および他の交渉国に、包括的で、どのセクター・品目にも例外を認めない、ハイレベルの貿易水準を要求しています」とも述べた。つまりここでも、すべての品目は例外なき関税撤廃の対象となることが改めて確認されたのである。

 TPP自体は、まったくの「秘密裡」に行なわれている。今回は特に、交渉も重要イシューが多く、スケジュールも差し迫ってきているという緊張感もあってか、交渉官から情報を引き出すことがなかなか困難である、というのが国際NGOの共通認識だ。

 しかし、「国」と「国」との交渉の舞台のすぐ隣では、ここで紹介したように各地の財界が交渉官と集まり、財界によるプレッシャーがかけられているのである。

 さらに重要な情報として、このビジネス会合には日本から亀崎英敏氏(三菱商事常勤顧問)も参加し、米国首席交渉官バーバラ・ワイゼルと、ペルー首席交渉官に対し「日本が次回TPP交渉に参加できるよう交渉日程を遅らせるよう要請した」という(註2)。日本政府はいま、なんとか7月の交渉に1日でも多く参加することで、国内向け(特に参院選に向け)に、「TPP交渉に参加できる。聖域も守る。自民党だからできたんだ。だから自民党に投票してくれ」と言いたいのだろう。すでに交渉参加することが目的化している日本政府にとっては、たとえそれがたった1日・2日の「形式的な」参加であってもかまわない。「参加した」と見せることに意義があるのだから。そのために政府間だけでなく財界も一緒になって他国に攻勢をかける姿は、怒りを通り越して恥ずかしく、虚しいばかりだ。「会期延長となり滞在が延びれば、交渉官の滞在費用もかかる」という参加国が出ると、日本政府内では「それらの費用は日本が負担してもよいだろう」という驚くべき案まで出ているという(日経新聞報道)。そこまでして入りたい、と政府を突き動かすものは何なのか。当然、その視野には全国各地からの反対の声、私たちの暮らしや農業、医療、その他分野への悪影響など入っていないし、説明責任放棄や公約破りへの呵責もない。

「命は売り物ではない!」
 
TPPは交渉不能!」

 518日、リマのTPP交渉会合会場である高級ホテル前にて、現地&国際NGOや活動家が集まり、TPP反対アクションを行なった際のスローガンだ。ここペルーではTPPによる影響として、薬の値段の上昇が懸念されている。この言葉を私は、誰よりもまず日本政府に投げつけたい。


【註】

 ●1:http://www.scoop.co.nz/stories/WO1305/S00494/business-leaders-across-asia-pacific-call-for-tpp.htm






 

2013年4月21日日曜日

TPPで日本はどこまで「奪われる」のか?―「日米事前協議」の今後を「USTR貿易障壁報告書」から読み解く


「秘密」と「ごまかし」に包まれたTPP日米事前協議については、すでに発信した。このままでは、「何が本当に決まったのか」「これから何が起こるのか」、私たちにはまったく知らされないまま、日本がTPP交渉に参加してしまう危険性がある。事前協議の段階で、すでに何の国益も守れていないどころか、日本は自動車や保険、非関税措置などについての内容を米国に差し出していることは明らかになった。USTRの発表文書には、これら日本の譲歩内容について「日本が『一方的に』表明した」と書かれている。これを私は屈辱と怒りを持って改めて読む。

 さて「自動車」「保険」などの個別具体的な項目については、米国の発表ではかなり詳細な合意内容が書かれている。非関税措置についても、日本は「保険」「透明性/貿易円滑化」「投資」「規格・基準」「衛生植物検疫措置」5つの項目だけだが、米国側はこの5つに、「知的財産権」「政府調達」「競争政策」「急送便」の4つを加えた9項目を挙げている。米国側はより明確に9項目を今後の二国間交渉のテーブルに乗せる、としているのだ。

 そしてすでに述べたように、米国側は「今後も非関税措置については交渉項目が増える可能性がある」と言及している。

 この間、このことについていくつかの質問を受けた。
「挙げられた9項目以外に、どんなものが対象となるのか?」という問いだ。

 ある根拠をもって、これに答えることができる。
 今回はこのことをできるだけ多くの人に知ってもらいたい。

「USTR外国貿易障壁報告書2013」
 米国代表通商部(USTR)は、「外国貿易障壁報告書」(National Trade Estimate Report on Foreign Trade Barriers:通称「NTEレポート」:注1)という文書を毎年3月末にリリースする。USTR1974年の米国通商法(The 1974 Trade Act)に従い、大統領と上院財政委員会、そして下院のしかるべき委員会に対して、外国の貿易障壁に関する報告書を提出する義務を負っている。報告書には、米国のモノ、サービスの輸出、米国民による直接投資及び知的財産権の保護に影響を与える「外国の貿易障壁」が取り上げられる。

 平たくいえば、「米国の貿易の邪魔をしている世界各国の国内法や制度、慣行」集だと思えばよい。400ページにも及ぶ膨大な報告書であり、2013年度は世界61か国の「貿易障壁」が挙げられている

 最初に押えておきたいことは、この61か国の中でも、「日本」と「中国」の貿易障壁については圧倒的に分量が多い。割かれているページ数はどの国も平均して58ページであり、少ない国は2ページほどしかない。

 しかし中国は41ページと際立って多く、次いで日本が16ページとなっている。つまり米国の貿易にとって「やっかいな国」は中国と日本なのだ。当然、この両国が挙げられる理由は、世界経済トップクラスの国であるからでもある。経済規模が小さい国の「貿易障壁」を一生懸命に取り除いたところで、結果的に輸出や投資ができる規模が小さければ、米国にとって意味がないからだ。

 さて「日本の貿易障壁」についてである。

 すでに外務省は、2013年度の「外国貿易障壁報告書」の日本についての項目を日本語に仮訳しウェブサイトに掲載している(注2)。
 

基本的に、ここで挙げられたおびただしい数の項目は、米国にとっては「取り除きたい」日本の国内規制や法律、慣行だ。列挙してみよう。項目だけではわかりにくい内容もあるが、上記の日本語仮訳にある程度内容が示されているのでそちらを参照されたい。

1 輸入政策
 (1) 牛肉輸入制度
 (2) コメ輸入制度
 (3) 小麦輸入制度
 (4) 豚肉輸入制度
 (5) 牛肉セーフガード
 (6) 水産品
 (7) 牛肉,かんきつ類,乳製品,加工食品への高関税
 (8) 木材及び建築資材
 (9) 皮革製品・靴
 (10) 税関問題★

2 サービス障壁
 (1) 日本郵政★
 (2) 保険★
   ア かんぽ生命
   イ 外国保険会社の現地法人化
   ウ 共済
   エ 保険契約者保護機構(PPC
   オ 保険の銀行窓口販売
 (3) 他の金融サービス
 (5) 電気通信 
   ※日本政府仮訳では(4)が抜けているので仮訳原文ママ(5)とする
   ア 固定回線相互接続
   イ 支配的事業者規制
   ウ ユニバーサルサービス
   エ モバイルターミネーション(携帯電話接続)
   オ 新しい移動体無線免許
 (6) 情報技術(IT)
   ア クラウドコンピューティング
   イ 医療IT
   ウ プライバシー
    IT及び電子商取引
   オ 海外からのオンライン・コンテンツの消費税
 (7) 司法サービス
 (8) 教育サービス

3 知的財産保護★

4 政府調達★
 (1) 建設,建築及び土木工事
 (2) 情報通信(IT)の調達

5 投資障壁★

6 反競争的慣行★
 (1) 独占禁止の遵守及び抑止の向上
 (2) 公正取引委員会の手続的公正と透明性の向上
 (3) 談合撲滅のための手段拡充

7 その他分野及び分野横断事項の障壁
 (1) 透明性★
   ア 諮問機関
   イ パブリックコメント
   ウ 規制と規制執行の透明性
 (2) 商法 
 (3) 自動車関連★
 (4) 医療機器及び医薬品
 (5) 栄養補助食品
 (6) 化粧品及び医薬部外品
 (7) 食品及び栄養機能食品の成分開示要求
 (8) 航空宇宙
 (9) ビジネス航空
 (10) 民間航空
 (11) 運輸及び港湾


繰り返しいうが、これらはすべて、「米国が、米国にとって障壁になると指摘する日本の法律・制度・慣行」だ。ここに挙げられた項目は、これまで何度も繰り返し、「障壁」とされ取り除くよう圧力をかけられてきた。ここまでの数を挙げられれば、まるで「お前の国は保護主義で規制だらけ。ありとあらゆるものが、米国の利益にまったく寄与していない」といわれているようなものだ。
そもそも、なぜ米国は他国の社会・経済・文化的な背景からつくられた法律や制度を、「障壁」などという権利があるのか、根本的に疑問だ。一つ一つの項目の文面を読んでいくと、なぜここまで米国に「問題だ」といわれなければならないのか、怒りがわいてくる。それほどにまで、この報告書は米国からの一方通告なのである。もちろん、人に指摘をされて気づく、ということは一般社会でもあるので、もし私たちが主権者として総合的に検討した上で「こうした法や規制はやはりない方がいい」と思えば、変更することはあり得るだろう。しかし、米国による、自由貿易のさらなる推進のための、しかも米国の利益を守るためにこれら規制緩和が行なわれるのだとしたら、それは主権の侵害であり、日本政府自らが国内的な議論も経ずにその要求を受け入れるのであれば、主権の放棄といわざるを得ない。

重大なことは、TPP事前協議で挙げられた項目はほぼすべてこの「貿易障壁報告書」に載っているということだ。事前協議で挙げられた9項目には★印をつけたので参照されたい。事前協議でまだ挙げられていない項目はそれ以外のすべてだ。当然、米国は今後も次々とそれら項目の中から非関税措置などの二国間協議にて「この障壁を取り除け」と要求してくる可能性は高く、とても9項目で済むどころの話ではないのは、誰の目から見ても明らかだ。

おそらく日本政府は、「仮に米国が次々と非関税措置の二国間交渉を持ちかけてきても、日本政府がすべてを丸のみするわけではない」と反論するだろう。しかし、すでに起こっている「事実」として、TPP事前協議において、何としてでもTPP交渉に参加したいと焦る日本政府は、米国の要求をいくつも「丸のみ」した。「次からは大丈夫」という言葉は、まったく信用できない。

さらに最も重要なのは、今後、TPP交渉と並行してこの二国間事前協議が進むということだ。TPP事前協議では、「二国間協議はTPP交渉が終わるまでに済ませる」とされている。現段階で、米国はTPP交渉の妥結を、日本の参加の有無にかかわらず遅くとも2013年中ということを目指している。つまり、そのゴールに合わせて、今後ここで挙げたような領域での日本との非関税措置交渉を急ピッチで進めていく危険性があるということだ。

事前協議で設定された、この「TPP交渉と二国間協議」の二本立ての交渉ラインというのは、まさに米国による「罠」であると私は考えている。言い換えれば、日本は「TPP本交渉とセットで、米国が長年指摘してきた『貿易障壁』を片づけないとダメだ」と確約させられたのだ。

 TPP交渉の実態は、「秘密」と「嘘」に塗り固められている。しかし例えば今回取り上げたように「貿易障壁報告書」などすでに出されている情報をもとに、TPPは不正・不平等であり、主権を脅かす危機そのものだということが、「誰にとっても明らかな事実」として伝えることは可能だ。私たちにできることは、参加表明撤回と、TPPそのものを葬り去るために、さらに多くの秘密と嘘を暴露し続けることだ。
 
 
 

 

2013年4月17日水曜日

TPP日米事前協議を検証する 【続報】―日米の認識のギャップには「関与しない」という日本政府


 2013415日、本ブログにて、TPP事前協議の合意として、日本政府と米国政府がそれぞれリリースした文書内容について掲載した(注1)。その主旨は、双方の政府が「合意をした」とされる内容の発表が、あまりにもかけ離れているという点だ。ちょっとした誤解や解釈の違いではすまされない、大きな認識のギャップがそこにはあった。

 記事掲載後にも、私には疑問が残った。日本政府が出した「日米協議の合意の概要」(注2)にである。内閣官房のウェブサイトには、この「概要」が掲載されている。しかしそれは「概要」であって、では詳細な中身が書かれた「本文」はどこにあるのか?という疑問である。

 いくつかの手段で調べた結果、驚くべき事実がわかった。

 内閣官房によれば、「日本政府が公式だとする『合意文書』そのものは、①「日米間の協議結果の確認に関する往復書簡(仮訳)」(注3)(在米日本大使の佐々江氏と、USTRのマランティス代表代行の間で取り交わされた書簡1通ずつである)と、②「自動車貿易TOR(仮訳)」(注4)というのだ。いずれも内閣官房のウェブサイトに掲載されている文書ではある。

 私ははじめ、何のことだかさっぱりわからなかった。

 そのような書簡が、重大なTPP事前協議の内容が書かれた公式文書であるとされているとは夢にも思っていなかった。しかし内閣官房によれば、まず佐々江氏とマランティス氏の間で①の書簡がやりとりされた後に、日本は「合意内容の概要」という文書を、米国はUSTRのリリースを出した、というのである。
 

 しかし、さらに疑問は深まる。

 日米両国政府の「合意」事項がその書簡であったとしても、私が先のブログで指摘した、その後の両政府の発表内容に大きなギャップがあるという事実は消えない。同じことを合意し、共通の文書もあるというのなら、後に日本政府はUSTRが出したリリースを見て、驚いたはずではないのか。

 この点について内閣官房の担当者は、「結局はこの二つが合意文書であり、USTRが何を言ってるかは日本政府は関知しない」との見解を示した。

 それを聞いてさらに私は仰天した。

 合意を経た後の相手国のリリースについて、それが自国の発表内容と大きく異なっていたとしても「関知しない」というのだ。こんなことがあるだろうか。個人レベルで考えたとしても、「こういう約束をした」と両者が合意した後に、相手がそれと矛盾した内容をもって「私はこの人とこういう約束をした」と対外的に語っていることに気づけば、「いやいや、そういう内容の約束ではなかったでしょう」というはずであるし、いうべきである。ましてやこれは個人レベルの約束などではなく、私たちの暮らしや社会、国家の主権そのものの変容・変質を迫る危険のあるTPPの事前交渉の内容である。「関与しない」どころか、逆に、相手国がちゃんと約束通りの内容を国内的にも発表しているか、鋭く目を光らせてチェックし、少しでも間違ったことを述べているとわかれば、ただちにそのギャップを問題にし、訂正を求めたり再度の協議の場を求めなければならない。しかし日本政府は、あくまで合意文書は先の2つであり、その後のリリースは関知しないと、その責任を放棄しているのだ。

 さてこのような経緯を受けて、私自身の書いた記事について、もし日本政府がいう「合意の公式文書」が上記2点だとすれば、事実関係として若干の訂正が必要になるかもしれない。私は当初、USTRのリリースおよび日本政府の「概要」こそが公式の合意文書であると理解した。したがって、それらを比較し、日本政府が意図的に、佐々江・マランティス書簡から無理な引用をしつぎはぎをしたと批判したからだ。しかし、何が双方にとっての正式な合意文書か、という点については、日本政府の見解をただ信用するわけにはいかない。むしろ真実は何なのか、改めて日米双方に確認をしていく必要がある。

 それ以外の部分については、公式な合意文書がどうあれ、問題の本質はまったく変わっていない。日米双方の見解には大きな隔たりがあり、それ以上に、「相手国の出したリリース内容については関知しない」という日本政府の無責任ぶりが露呈するという結果となった。問題は、ここで生じている両国の認識のギャップが、ただほおっておけばいいという類のものではないということだ。USTRの文面からは、明らかに、米国は日本に数々の要求をしているし、今後も引き続きしてくることになることが伝えられている。「それには関知しない」と今いっている日本政府は、やがて現実的に次々と要求がなされた際に、「我々はそんなことには関知しない」とでもいって済ませるつもりなのだろうか? 残念ながらそれですまされるばずはない。つまり、日本政府がいま述べている見解というのは、国民に対してあまりにも場当たり的な逃げ口上であり、根拠のない説明である。

 もう1点、事前協議をめぐって重大な点がある。日本政府の「事前協議の概要」には、次のようなくだりがある。非関税措置への取り組みに関して、「日米間でTPP交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定」とされている。

 これを見て、「事前協議といっているのに、なぜTPP交渉と並行するのか?そもそもこの合意というのは『事前』なのだからTPP交渉の『前』に終わっているはずなのではないのか?」と思った方は、ごく常識的な感覚を持っていると思う。

 つまり、なぜ、日米の非関税措置についての協議は、TPP交渉という多国間での枠組みと並行しながら延々と続くことになるのか?という問題である。

 ここには米国の意図と、実に巧妙なやり方がある。

 もしTPP交渉自体がもめたりしてうまくまとまらなかった場合、米国にとっては日本から得るものはさほどないということになりかねない。だからこそ、多国間協議であるTPP交渉とはまったく別の二国間協議という枠組みにおいて、「TPP交渉が始まってからも、米国は日本に非関税措置の取り組みを求める」といっているのだ。つまり米国は、TPP交渉で日本から実利を取れなければ、二国間の協議で取ればいいと考え、保険をかけているようなものだ。この二重の縛りは、日本にとっては致命的である。仮にTPP交渉で日本がうまく立ち回って、米国の要求を丸のみしなかったとしても、米国は「それならば二国間協議でやる」と切り替え、日本に同じ内容を迫ってくるだけだ。二国間交渉において日本が上手にかわしていくという確率は、残念ながら大変に低いといわざるを得ない。

 まったく絶望的な気分にもなるが、しかし今回の事前協議の合意発表をめぐっては、日本がまったくといっていいほど勝ち得るものがなかったという点が明らかになった。逆に、米国にあらゆる面で譲歩をしまくり、さらには日米で大きく異なる発表内容についても「何も異議は申しません」という立場をとっていることも明らかになった。すでにこれは一国の政府の体をなしていないのだが、明白なのは、「TPPに入っても日本には何もメリットはない」ということだ。事前協議でこれだけの内容を唯々諾々と米国に渡しておきながら、「本交渉では交渉力を発揮して聖域を守ってルールメイキングをします」といったところで、その言葉は信頼に足るはずがなく、空疎な妄想といっても言い過ぎではない。

 このような事実を一つ一つ提示し、多くの人の目に、耳に、伝えながら、参加表明撤回を求める声をさらに大きくしていかなければならない。
 
 

 

2013年4月15日月曜日

嘘とごまかしの政府発表―TPP日米事前協議内容を検証する


 2013412日、日米両政府はTPPに関する「事前協議」に関する合意文書をそれぞれ発表した。315日の安倍首相のTPP交渉参加表明以降、加速化されてきたといわれるこの事前協議だが、何としてでもTPPに入りたい日本と、その日本の足元をみて「高い入場料を払わせる」と意気込む米国という構図はすでにはっきりとしていた。

 私自身は、事前合意の発表をするという予告を聞いた際、「まさか本当のことを発表するわけがない。なぜなら、もしすべてを発表してしまったら日本がとことん身ぐるみをはがされ、TPP交渉に参加する前に丸裸の状態になることが明るみにでるから」と考えていた。

 そして発表がなされた後、日本政府の発表内容、米国USTRのリリース(英文原文)、そして各種報道を読み比較をしてみたところ、驚くべき事実がわかった。日本政府の合意公開資料は、USTRがリリースしたプレスを都合よくつまみ食いしたものなのだ。しかも、ねつ造ともいえる内容が含まれている。


写真① USTRのプレスリリース本文
 まずUSTRが発表したプレスリリースである。本文(※注1、写真①)と非関税措置に関する付属文書(※注2、写真②)からなる(これらの翻訳は近々公開しますので少しお待ちください)。

 

 
 
 
 
 
 
 
写真② USTRのプレスリリース付属文書(非関税措置)
 



 
 

 
 
 
 
 そして以下が日本政府が発表し、内閣官房のホームページにも掲載されている「日米合意の概要」である。新聞各紙にもこの内容が引用される形で報道されている(注3)。

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日米協議の 合意の概要

平成25412
内閣官房TPP政府対策本部

1 日本が他の交渉参加国とともに、「TPPの輪郭」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認するともに、日米両国が経済成長促進、二国間貿易拡大、及び法の支配を更に強化するため、共に取り組んでいくこととなった。

2.この目的のため、日米間でTPP交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定。
対象分野:保険、透明性/貿易円滑化、投資、規格・基準、衛生植物検疫措置等

3.また米国が長期にわたり懸念を継続して表明してきた自動車分野の貿易に関し、
(1)TPP交渉と並行して自動車貿易に関する交渉を行なうことを決定。対象事項:透明性、流通、基準、環境対応車/新技術搭載車、財政上のインセンティブ等
(2)TPPの市場アクセス交渉を行なう中で、米国の自動車関税がTPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされること、及び、この扱いは米韓FTAにおける米国の自動車関税の取り扱いを実質的に上回るものとなることを確認。

4.日本には一定の農産物、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識しつつ、TPPにおけるルール作り及び市場アクセス交渉において緊密に共に取り組むことで一致

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1.合意文書は米国からの一方的な「通達」

 上記2つの政府が出した文書を読み比べて、まず気づくのはその「トーン」の違いである。USTR側が出した文書は、明らかに米国から日本への「要求」という基調で書かれており、日本がそれにどこまで応じたか、ということに文書の主旨は尽きる。もちろん各政府は自らのプレゼンスを最大に行なうため若干のトーンの違いはあるだろうが、今回の2つの文書は、そのような「微妙な立場の違い」という説明ではすまされないほど強者と弱者の違いは明瞭だ。対等平等な合意文書というには程遠い、いわば「日本が宿題を米国に出し、それを添削してもらった」ようなものだ。

 一方日本政府の発表文書には、もちろんそのようなトーンは消されている。2月の日米共同声明でも同じだったが、あくまで「対等な日米」を演出しようとする意図が読みとれる。


2.項目が十分に反映されていない

 日米での事前協議の内容について、日本政府の発表した「概要」は、明らかに、意図的に国民からの批判を避け都合よく項目が取捨選択されている。

 USTR文書では、具体的な項目として「自動車」「保険」が立てられているのだが、日本政府の概要では、「自動車」の項目はあるが「保険」はない。USTR文書では約9行にもわたり記述されているにもかかわらず、その項目は削除され、保険については「その他の非関税障壁」という中の一つとしてふれられているだけである。

 また例えばさまざまな項目内で、USTR原文ではかなり詳細に記述されているにもかかわらず、意図的な省略が目につく。

 
3.意図的な項目の削除

 USTRがあげた日本に求める非関税措置の項目リストは以下のものだ。
 ・保険
 ・透明性
 ・投資
 ・知的財産権
 ・規格・基準
 ・政府調達
 ・競争政策
 ・急送便
 ・SPS(植物検疫)

 しかし日本政府の「概要」では、「知的財産権」「政府調達」「急送便」が抜け落ちている。
 知的財産権は、TPP交渉でももっとも妥結困難なヘビー・イシューであり、薬価や商標権、著作権など私たちの暮らしに大きくかかわる分野である。
 「政府調達」については、TPPに入れば例えば公共事業などの入札に外国企業も参入できることになり、これも地域経済や中小企業にとって大きな影響がある。さらに「急送便」は日本郵政の国際急送便事業と対等な競争条件を外国企業が確保できることが求められている。
 そもそも、非関税措置問題というのは、農産品などの関税品目とは異なり、幅広い分野・品目、サービス、規制が対象となる。TPPの怖さというのはむしろこの非関税措置がどれだけ「開放」させられるのか、という問題に尽きるといってもいい。私たちも事前協議において、牛肉や自動車、保険といったあらかじめ危険視されてきた品目以上に、どれだけ多くの非関税障壁が米国から「問題」とされるのか、強い関心をもって注視してきた。

 それだけ重要な内容であるのだから、1項目でも落とすことは、国民に対する嘘であり許されることではない。にもかかわらず、日本政府は先の3つの項目を意図的に削除したとしか考えられない。おそらくさらなる事前協議で妥協しなければいけない内容を少しでも少なく見積もりたかったのだろうが、USTRのリリースと比べれば一目瞭然である。姑息な手段というしかない。

 そしてUSTR文書の最後には、このような1行がある。

「両国の合意があれば、これら問題以外にも付け加えることができる」。

 もちろん、日米が対等に「合意」などできるわけがないので、これは米国側からの「脅し」である。「これだけで済むとは思うなよ」と、最後に念押しまでされているのだ。そして、当たり前だが日本政府発表では、このような「可能性」は一切ふれられていない。

 

4.「日本の農産物への配慮」など合意文書には一言もない

 最大の問題は、日本政府発表の「4.日本には一定の農産物、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識しつつ、TPPにおけるルール作り及び市場アクセス交渉において緊密に共に取り組むことで一致」とある点だ。私はUSTR原文とこの概要をつきあわせ、大変に驚いた。原文には、このような内容が書かれた部分は1行たりとも存在しないからだ。

 むしろ、原文では、「高い基準を満たすための日本の準備」という項目のもと、「二国間協議を通じて、米国は、①日本がTPP交渉に参加するならば、現在の11ヶ国によって交渉されている高水準の協定を実現すべく準備すること、②これに対し日本は2月22日の共同声明においても、すべての物品を交渉の対象にすること、他の交渉参加国と共に、高水準で包括的な協定を実現することを日本は明確にした」と書かれている。要するに「TPP交渉はすべての物品が対象である」と断言されているのである。

 これらの下りもすべて、日本政府の概要からは丸ごと削除されており、その代わりに、「日本の農産物などのセンシティビティがあることを認識しつつ」などという真逆なことが書かれているのである。

 結論からいえば、こうした行為は文書の「ねつ造」という。

 しかしいろいろと周辺を調べると、こういう仕掛けであることがわかった。

 USTRのプレス文書の中に、補足資料として、駐米日本国大使・佐々江賢一郎氏とUSTRのマランティス代表代行の間で送り交わされた書簡が1通ずつ存在する(注4)。マランティスから佐々江宛てに返された書簡の最後のパラグラフに、このように記述されている。

「日本と米国は,日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ、TPPにおけるルール作り及び市場アクセス交渉において共に緊密に取り組んでいくことを楽しみにしています」。

  つまり、マランティスからのこの言葉を、「日米事前協議内容」に無理やりにつぎはぎし、日本国内で議論となっている「聖域」問題をごまかそうとしたのである。

  一般通念上、「合意文書」として正式にプレスリリースされた本文を適切に訳さず、付属の文書から都合よい部分だけを引用し、それを本文の「概要」とすることは、当たり前だが「改ざん」「ねつ造」である。一つ一つの文言はあっていたとしても、文脈は壊され、意図も不明瞭になる。そもそもマランティスの書いた最後の文面は、限りなく「リップサービス」に近いニュアンスであるし、仮にセンシティビティが存在することがわかっていても、本文において「すべてを関税ゼロにする」と明記されているのである。

 この部分をわざと削除し、代わりにマランティス発言をつぎはぎした日本政府の罪は重い。まさに急ごしらえの条件交渉を譲歩しまくった結果、あまりに多くの「敗退」の連続であり、何とかそのボロを隠ぺいすべくあわてて文書をつぎはぎしたに違いない。 

 さすがにこのことはマスメディアも問題視しており、413日付の朝日新聞でも、「米国の本音は米政府が12日に発表した合意文書にあらわれている。日本政府が発表した合意文書と大きく違う内容なのだ。自動車や保険などで日本が譲歩したことはくわしく書かれている。だが、日本の農産物に配慮することについては一切ふれられていない」と記載されている。さらに同紙では、マランティスやUSTR側の意向として「すべての品目で関税ゼロをめざす」というコメントも合わせて掲載しているのだ。

  まさにこれが、米国の本音であり、事前協議の本質である。

 それを知っておきながら、国民を欺こうとする、ここまで愚かな政府を持ったことに、怒りを通り越してあきれ果てるが、しかし、徹底的にこの「嘘とまやかし」を糾弾していかなければならない。

 私は、政府に対して、ここに記述した内容について公開質問状などを提出したいと思っている。多くの方々の参加を求めるようなしかけも工夫したいと思うので、その際にはぜひご協力をお願いしたいと思います。
 
★注2: