2014年10月26日日曜日

自民党議連「TPP交渉における国益を守り抜く会」の新会長・江藤拓氏について

自民党内には、いわゆるTPP慎重派議連「TPP交渉における国益を守り抜く会」というものがある。メンバーのほとんどが、先の選挙で「TPP参加断固反対」などといって当選した議員である。当時は「TPP参加の即時撤回を求める会」という名称だったが、2013年3月15日の参加表明以降は、名前を現在の「国益を守り抜く会」に変えた。要するに、「参加」してしまった以上、それを前提として「国益を守り抜く」というスタンスに変わったということだ。いうまでもなく、これは有権者に対しては公約違反だ。

この会の動きや評価、「本当にこれら自民党議員は、最後までTPPに反対するのか?」などをめぐっては、書きたいことは山のようにある。が、今回は、自民党のTPP対策委員長となった森山裕会長に代わって、同会の会長となった江藤拓氏についてのみ書く。

日本農業新聞 2014年10月13日
江藤氏は、宮崎選出の議員で、これまでも自民党農林部会会長や、農水副大臣などを務めているが、TPPに関しては断固反対の姿勢を取り続けてきた。「国益を守る会」会長に就任するにあたって、日本農業新聞のインタビューの中で、改めて国益=衆参両院の農林水産委員会の決議、すなわち農産品の重要品目の聖域確保の決議を守るということを名言している。繰り返すが、かつての「交渉参加反対」が、いつしか「国益を守る」という論点にすり替えられてしまったことは重大な問題である。この点について、いったいどのように考えているのか、有権者に対しどのように説明するのか、私は交渉参加以来、何人かの自民党議員に尋ねてきたが、多くの議員の口は重い。明らかにされなければいけないポイントは、やはり2012年末の総選挙時から、2013年2月の安倍首相・オバマ大統領の会談、そして3月15日のTPP交渉参加宣言までの数か月の間に、誰がどのように動き、自民党内で何が「合意」されたのか、ということだと今でも考えている。

今改めてそのことを考えた理由は、江藤氏の「国益を守り抜く会」会長就任という報せを聞いたからだ。

実は江藤氏が会長就任という話題を聞いて、大変気になる新聞記事をすぐさま思い出した。2013年3月15日の産経新聞「首相ひそかに党内調整」というものだ。この日付は、まさに日本のTPP参加を安倍首相が表明した日。その舞台裏を記事は紹介している。記事には「自民党内の農水族ら慎重議員への説得工作には、2人のキーマンがいた」とある。その一人が江藤氏だ。首相の「密命」で江藤氏は農水族やJAへの根回りをしたというのだ。ちなみにもう一人のキーマンとは、改造人事で農水大臣に就任した西川公也氏と書かれている。

もしこのことが真実であれば、「国益を守り抜く会」は明らかにヤラセそのものだ。仮に日本が聖域を守れないまま交渉が妥結した際に、「我々は日本の農業を守るために最後まで必死にがんばった」と言い訳をするための道具でしかない。報道の真偽は確認できないが、いずれにしても自民党内の「慎重派」議員に対しては、公約を守れ、決議を守れ、という声を高めていかなければならない。

※以下に、本文で紹介した産経新聞記事の全文を引用する。リンクはすでに切れていて読むことはできなくなっています。

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★産経新聞 2013年3月15日★

首相ひそかに党内調整

TPP交渉参加きょう表明
安倍首相は15日、TPPの交渉参加に踏み出す。決断が可能となった背景には、自民党内の農水族ら慎重派議員への説得工作が奏功したことがあるが、そこには首相の柔軟な戦術と2人のキーマンの存在があった。

■キーマン2人
「慎重派や全国農業協同組合中央会(JA全中)に根回しをしたのは、筋金入りの農水族議員だ」。政府高官のいう議員とは江藤拓農水副大臣。
副大臣になる前は党の「TPP参加の即時撤回を求める会」の幹事長代理だった。訪米から帰国した翌日の2月25日、首相は報道陣に悟られないよう、裏口から江藤氏を官邸に招きいれた。

「もう新たな局面に入ったんだ」。首相の一言で江藤氏は趣旨を察した。日米首脳会談で関税撤廃の例外を確認したのだから、例外品目を交渉で勝ち取る条件闘争に局面は移ったー。
江藤氏は農水族やJAへの根回しという「密命」を受け入れた。

さらに首相は、江藤氏に時間をかけた説得工作を指示した。それは首相の戦術変更も意味していた。実は、訪米にあたり首相は交渉参加表明のタイミングを「帰国直後」「2月28日の施政方針演説」の2通りと想定していた。説得に時間をかけない正面突破の戦術といえる。

だが、米側から議会への説明などに時間が必要なため「発表を待ってほしい」と要請されたことで方針を転換。待っている間に党内の反対論が勢いづく事態を避けるため、丁寧に説得にあたることにしたのだ。

■日程狙い撃ち
もう1人のキーマンは、党TPP対策委員長に起用した西川公也衆院議員だ。小泉純一郎政権下で郵政民営化担当の内閣府副大臣を務め、当時官房長官だった首相とも近い。対策委では慎重論の矢面に立ち、「政府も一丸で交渉にあたる。攻めて攻めて攻めまくる」と防波堤役を果たした。

さらに、3月15日の参加表明という日程も、首相が狙いすましたものだ。12日には農林漁業など8団体の反対集会、17日は自民党大会が予定されており、その間しかないと見定めた上での表明となる。

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