2017年6月2日金曜日

停滞するメガ貿易協定―米国のTPP離脱とRCEP



 米国のTPP離脱の背景
 二〇一六年一一月、米国でトランプ大統領が誕生してから、世界の風景は一変した。最も大きな出来事の一つは、米国のTPP撤退だろう。二〇一〇年以降、米国はTPPやTTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)などの自由貿易協定を通商政策の柱に位置付け、交渉では一貫して主導権を握ってきた。その米国自身がTPPを「悪しき協定」と定義し撤退したことは、あまりにも皮肉な結末だった。
 日本も含むマスメディアでは、トランプ氏によってTPPが崩壊したと語られるが、私たち国際市民社会、とりわけ米国市民社会のとらえ方は違う。この六年間、TPP参加国の市民はあらゆる手段を駆使して交渉阻止の努力してきた。TPPを実現したいグローバル企業の圧倒的な資金力と政治力に比べればもちろん微力だが、草の根のキャンペーンや学びの場、国会議員への働きかけ、リーク文書の分析などを協力して進めてきた。この国際連帯運動はWTO設立以降、各国市民社会が積み重ねてきた蓄積の延長上に位置づけられる。
 風向きが変わってきたのは二〇一五年五月、米国議会にて大統領貿易促進権限(TPA)取得をめぐる攻防が激化した頃からだろう。その直後の七月ハワイ交渉会合では、メキシコやニュージーランドなどが自国の利害を強く主張、達成されるはずだった妥結は先送りされた。漂流を恐れた米国が九月アトランタ会合でとった作戦は、細かい点は後回しににして、ともかく「大筋合意」を作り上げるというものだった。当然、日本も同じく妥結を急いだ。そうしてできた急ごしらえの「完成品」は、二〇一六年二月の署名後、各国議会での批准手続きへと移った。しかしすでにこの時点で、米国政府が期待したTPP発効へ向かう歯車は、十分に狂い始めていた。そのことを示す象徴的なエピソードを私は強く思い出す。
 一つは、アトランタ会合での米国労働者たちの激しいTPP反対運動だ。南部アトランタには黒人が多く、貧困層や失業者も多い。彼らは大規模なデモを組織し、秘密交渉が行われている高級ホテルの前で、「TPPは雇用を奪う」「大企業の利益よりも人々の暮らしを!」と必死に訴えていた。重要な点は、これがバーニー・サンダースの選挙運動を基盤にしていたということだ。つまり大統領選の一年前から選挙戦は始まっており、その主要争点はTPPなど自由貿易推進の是非だったわけだ。サンダースもクリントンもそしてトランプも、TPP撤退を公約として掲げてきたが、その背景には長年にわたるこうした根強い運動があった。
 もう一つは、TPP署名のちょうど一カ月前の二〇一六年一月、米国がNAFTA(北米自由貿易協定)の投資家対国家紛争解決(ISDS)条項のもとで「トランス・カナダ」社から提訴された件だ。ISDS提訴の多くは、米国企業が途上国政府を、そして近年では先進国の政府をも訴えるケースだ。ISDSはすでに国際市民社会で強く批判されているところだが、その「強者のツール」を使って米国自身が訴えられたという現実に、米国民は大きな衝撃を受けた。もちろん、これまでも米国が提訴された事例もあるが、このときの事案は、カナダから米テキサス州に原油を運ぶ「キーストーンXLパイプライン」建設計画の撤回をめぐるものだった。ここには様々な経緯がある。建設計画地は先住民族の居住地を縦断することから、もとより反対運動が巻き起こっていた。また気候変動対策に逆行すると環境運動も激しく反対。その声に押され、オバマ大統領(当時)は、二〇一五年一一月、パリでのCOP二一(国連気候変動枠組条約第二一回締約国会議)にて計画撤回を表明した。この「英断」に米国はもちろんカナダやEUの環境団体は大きく沸き立った。その直後、トランス・カナダ社はオバマ政権の判断を「不当」とし、一五〇億ドルの賠償請求をもって提訴したのだ。しかもこの請求額は実際の投資額の五倍近くにもなるため、ISDSの不当性に米国市民の怒りは頂点に達し、TPP反対運動にも一気に火がついた。さらに大統領選中、トランプ氏が同計画の再開を目論んでいるとわかると、この地は「米国民主主義の闘いの聖地」となり、数千人規模の人が泊まり込みをするようにもなった。
 こうした運動の経緯からも、トランプ氏の当選そしてTPP撤退に対する米国市民社会の反応は大変に複雑なものとなった。「TPPを葬ったのは決してトランプではない。市民社会が六年間、必死に抵抗してきた成果だ」との声明が市民団体やNGOから次々に発信された。大統領選翌日、米国最大の環境団体シエラクラブのウェブサイトには「今日から四年間、毎日毎日がトランプ氏との闘いだ」というバナーが掲げられた。トランプ政権下の環境政策は確実に後退するからだ。
 私自身も、米国のTPP撤退はこうした運動の成果であり、何よりも大統領選まで批准をさせなかったこと(引き延ばし作戦により大統領選での争点化に成功したこと)が大きいと考えている。同時に、これは「必然」であるとも強く思う。米国の労働者たちの生活苦、貧困や格差は確かに極限近くに達している。グローバル化の中で企業が海外に流出し、地域から雇用が次々と消えていく中で、人々は自分が「代替可能」なちっぽけな労働力に過ぎないという現実に直面する。それは、生きがいや幸福感を容易に破壊し、アイデンティティの根本を揺さぶる。この状況は米国に限らず先進国が同時代的に抱える問題だろう。このように蓄積された実感によって「TPPで雇用が生み出せる。豊かになれる」という政府のスローガンは、たちまち拒絶された。もちろん、その受け皿にトランプ氏が選ばれたという現実は、米国社会が抱える最大の「難題」となり、今後人々はトランプ政権の政策を吟味し、闘っていく必要があるし、その闘いはすでに始まっている。

トランプ政権下の通商交渉と日本に迫る危機
 大統領就任直後、トランプ氏は公約通りTPP離脱とNAFTA再交渉を実行に移した。まず確認しておかなければならないのは、トランプ政権の通商政策を「保護主義」あるいは「反グローバリズム」と呼ぶ言説についてである。これは基本的に間違っていると私は考えている。これまでトランプ政権が打ち出してきた主張は、いわゆる保護主義的な政策と、その真逆である自由貿易推進・新自由主義的な政策のつまみ食いのようなもので、いわば自国の都合のダブルスタンダード。決して一貫性のある経済思想に立つものとは思えない。
 例えば、トランプ大統領は「日本が米国自動車の販売を難しくしている」というが、日本の自動車の関税はゼロ、自動車に関税を二.五%かけているのは米国の方だ。またリーマンショックを契機に、オバマ政権下で二〇一〇年に定められた「金融規制法」(ドッド・フランク法)の廃止も宣言。これにより一度は規制された金融の自由化・規制緩和が実施されることになる。国家経済会議の議長には、ゴールドマン・サックスの前社長兼CEOのゲーリー・コーン氏が選ばれ、財務長官も同社の元幹部であるスティーブン・ムニューチン氏だ。これだけ見ても、トランプ政権下でウォール街発マネーは世界中を駆け巡ることは必至だろう。同時に、インフラ投資によって一〇年間で雇用を二五〇〇万人創出し、連邦法人税を三五%から一五%に下げ、個人所得税も減税するといっている。これらの政策が実行されれば、米国経済は再び金融自由化を中心とする形に変化し、「グローバル化」の勢いは終わるのではなく、むしろ「マネー」を主役に猛然と加速する。その結果、所得格差の拡大も懸念される中、トランプ大統領は最低賃金を一〇・一〇ドルにするというオバマ大統領令を覆してもいる。これでは労働者の期待に応えることはできない。
 二〇一七年三月一日、米国通商代表部(USTR)は「二〇一七年貿易政策アジェンダ及び二〇一六年年次報告書」を議会に提出した。就任以来、TPP離脱とNAFTA再交渉、そしてバラバラで整合性のない個別政策はあっても通商交渉全体の方向は不透明だったが、ようやく輪郭が見えてきた。
 この報告書は毎年、米国政府の貿易政策を広報して国民と議会の支持を引き出すためのツールとして使われている。オバマ大統領時代にはTPPに相当なページが割かれたが、今年は一変してTPPは数行程度。「アメリカ・ファースト」というスローガンのもとで、米国の多国籍大企業が海外で利益を得るための自由市場の原則と透明性を強調している。要するに基本は例年の報告書と大きくは変わらず、金融や投資、ITなどの領域で多国籍大企業には今まで以上に外で稼がせ、利益を米国内に還元させるということだ。これは「保護主義」や「反グローバリズム」の思想とは程遠く、逆に世界中で米国の多国籍企業にとって有利なルールを強化することでしか実現しない。米国への富の集中への過程で、世界中で幾重にも搾取と不平等なルールがまかり通ることになろう。こうした内外に対する政策の非対称性を見ずに、トランプ政権の政策を「保護主義」と呼び、自由貿易の重要性を強調することは、意図的な誘導ではないかと思えるほどだ。また全体像を見ずに「関税で自国産業を守るのは主権の行使である」「自国に雇用を生み出すことはいいことだ」と評価をする言説が、TPPに反対してきた人たちの中にもあるのは残念でならない。確かにこれらは一般論としては正しいが、そのために何をやってもいいというわけではない。例えばトランプ大統領は、ツイッターで「高関税にするぞ」と脅しをかけながら、米国に投資を呼び込み、雇用を増やす作戦を行っている。メキシコに工場を建設するトヨタを批判し、米国のトヨタによる1.1兆円もの投資を約束させたのがいい事例だ。また先述のキーストーンパイプライン建設も再開する。そこには莫大なインフラ投資がなされ、一定の雇用が生み出されることになろうが、環境破壊をしながら進められる従来型の巨大公共事業は、将来にわたり米国民に利益を生み出すだろうか?
 もちろん米国が将来、本当の意味での保護主義に向かう可能性はゼロではない。先述の報告書では、WTOの紛争処理で米国に不利な判断が出た場合、必ずしも従わないと明示された。また不公平な貿易相手国に制裁措置を科す通商法三〇一条(スーパー三〇一条)の復活も示唆されている。これを実行すれば各国がWTO協定違反を訴え、貿易紛争が多発しかねない。少なくともいま米国は、戦後のIMF―GATT体制(ブレトン・ウッズ体制)の枠内に存在しており、その限りにおいて「自由貿易推進」という縛りがかけられている。またこれまで米国は二国間・メガFTAを進めつつも、WTOにも一定の力を注いできた。そんな中で米国がWTO軽視を前面に打ち出すのは極めて異例である。もしWTOの規定無視あるいは脱退という事態となれば、そのとき初めて米国は世界の貿易体制から離脱し、完全な「保護主義」へと変容する。
 
貿易だけでなくすべてが標的に
 このようにダブルスタンダードの米国の通商政策は、今後日本にも避けがたい災禍として降りかかる。TPP離脱後、米国は主要国との二国間貿易を目指すと宣言している。
 二〇一七年二月一〇日、安倍首相とトランプ大統領の日米首脳会談では、軍事・経済でさらなる日米同盟強化を確認。「日米経済対話」という名のもと、一)財政、金融などマクロ経済政策の連携、二)インフラ、エネルギー、サイバー、宇宙での協力、三)二国間の貿易枠組みの協議を行うことを決定した。つまり話は貿易だけでなく、財政、金融など広い分野でこれまで米国が日本に様々な形で押し付けてきた規制緩和や税制改革が、改めてトランプ大統領のもとでも要求される。
 当然それらは、TPPでの合意水準以上の自由化・規制緩和要求となろう。例えば二〇一七年一月二七日、日本へのコメ輸出増を一貫して求めてきた全米米協会は、「米国のTPP撤退は、日本への米の輸出に影響を及ぼさない。米国の米は、日本において構造的な障害に直面している。我々は、より多くの米国米を日本に出荷するように改善する、米国と日本との貿易協定を支持する」との文章をウェブサイトに掲載した。米国食肉協会も、TPP後の二国間交渉を要求している。
 関税だけの問題ではない。首脳会談後の二月一六日、在日米国商工会議所は、「共済等と金融庁監督下の保険会社の間に平等な競争環境の確立を」と題した報告書にて、かねてから同所が要求してきた外国企業と共済との「平等な」競争条件を日本国内につくれという主張を改めて述べている。いわば「共済つぶし」としてTPP交渉中にも私たちが最大の警戒を払ってきた分野の一つである。また日本は為替操作をしているとの声が米国産業界(特に自動車)には根強いが、この点も中国へと同様、厳しく追及されるだろう。TPPは頓挫してもこうした要望は止むことがない。むしろ二国間交渉ではTPP以上に米国が有利となるため、あらゆる面でこれまで以上の要求が突き付けられる危険がある。
 そして、米国の要求以上に深刻な危機は、日本国内における「TPP発効状態」の完遂ではないか。日本政府は発効が絶望となったにも関わらず、最も早くTPP批准を行った国の一つである。また二〇一五年一〇月の大筋合意直後から、「TPP対策予算」として、二年間で合計一兆一九〇六億円も支出している。主には農業分野だが、コンテンツや技術などの輸出促進なども含まれる。国会で審議も批准もしていない条約に予算出動した国など、他のTPP参加国の状況を調べても皆無である。前国会ではこのことの責任追及がなされたものの、政府は国庫返納をする気も、責任を取る姿勢もない。
 さらに日本国内ではこの三、四年の間に、TPP交渉と並行しながら、TPP発効を見越した規制緩和が次々と行われてきている。米国の要求に応える形でのいわば「TPPの前倒し」だ。例えばアフラック社は二〇一三年七月から日本全国二万店の郵便局にてがん保険の販売を実現できている。二〇一七年二月、農水省はモンサント社などの四つの遺伝子組み換え作物を承認した。規制改革会議は今も農協解体を推し進める。水道サービスの民営化をさらに促す水道法改正案も今国会で提出予定だ。内閣府「対日直接投資会議」では外国投資家のための手続き面での規制緩和がなされるだけでなく、国内での英語表記の充実や、子弟向けのインターナショナルスクールの増設、果ては日本の子どもたちへの英語教育の強化までもが含まれている。このような状態の中で、TPP水準以上の自由化が要求されたとき、日本政府は果たしてノーを突き付けられるのだろうか?
 「経済対話」の開始は、四月にペンス副大統領が来日して以降に本格化・具体化していくが、問題はこの経済対話(あるいは日米貿易交渉)については、TPP以上に秘密性が高くなるだろう点だ。正式な交渉会合も告知されず、交渉に関する文書が公表される可能性も極めて低い。私たち市民社会は、これまで以上の情報収集と発信を行わなければならない。

メガFTA終焉の始まり――RCEP神戸会合
 世界を見渡せば、TPPの難航と崩壊は、決して特殊な事例ではない。WTO停滞の中で二国間貿易協定(FTA)が推進され、その延長上に二〇一〇年以降に到来したのがメガFTA時代だ。現在交渉中のメガFTAは、TPP、TTIP、RCEP、日EU経済連携協定、TiSA、日中韓FTAなどである。強調したいのは、これらは交渉開始から約四年以上経つが、いずれも妥結しておらず、しかもこの一~二年で明らかに停滞しているということである。
 二〇一六年八月末、ドイツのシグマール・ガブリエル副首相兼経済・エネルギー相は、「これは自由貿易の話ではなく、協定でさえありません。これは基本的に、米国と欧州連合の経済エリート間の、国民の意思に反する連中の権益を守るための取引です」とTTIPを評し、交渉は本質的に失敗したと断じた。その直後の九月一日、日中韓とASEANは、「二〇一六年内」としてきたRCEPの大筋合意の目標期限を先送りすると決めた。二〇一六年末の大筋合意を目指した日EU経済連携協定も妥結の目途が立っていない。
 ドミノ現象のように起こるこれら協定の停滞・頓挫は、「メガFTA時代の終焉の始まり」を私たちに示唆する。なぜメガFTA協定は妥結できないのか? つい先日、日本で開催されたRCEP交渉会合を通して考えてみたい。
 
 二〇一三年五月から始まったRCEP交渉は、ASEAN一〇か国(ブルネイ、ミャンマー、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)と、ASEANと自由貿易協定(FTA)を締結している中国、インド、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの計一六カ国による自由貿易協定である。TPPの経済規模は三一〇〇兆円(世界貿易の約四割)、八億人の市場であるのに対し、RCEPは約二〇〇〇兆円(世界貿易の約三割)、人口では世界全体の約半分の三四億人もの広域経済圏となる。
 交渉分野は広く、モノとサービスの貿易から、投資、知的所有権、食の安心・安全、電子商取引、中小企業、経済的・技術的な協力、など合計一五分野と言われている。
 秘密交渉で進められている点もTPPと共通している。実はRCEPにはTPPの時のような「保秘契約」は存在しないのだが、TPP交渉よりも政府からの情報量は圧倒的に少なく、また漏洩されるリーク文書も少ない。ところがビジネス界はかなり交渉にコミットしており、ここに情報開示の非対称性が存在する。各国の市民社会は秘密交渉を批判し、自国政府に情報公開を求め続けている。私自身は二年ほど前から国際NGOメンバーの一員として、RCEPについても情報収集と発信を行ってきた。その中で痛感してきたのは、日本は中国に次ぐナンバー2の経済力で、現状の貿易額もRCEP参加国の比重は大きいにも関わらず、日本国内でほとんどの人がRCEPを知らないということだ。三年以上も交渉が進んできたのにマスメディアもほとんど扱わない。
 ところが、米国のTPP離脱が決定的となったことで、RCEPがにわかに注目を浴びることになる。
 RCEPは現在まで一七回の交渉会合を重ねてきている。二〇一六年一二月、インドネシアでの第一六回交渉会合最終日に、「次回は二〇一七年二月二七日~三月三日、開催地は神戸」と発表された。米国のTPP離脱後初めてのメガFTA交渉が、日本で開催されることになったのだ。各国が今後どのような方針で貿易交渉に臨むのか、交渉は加速するのか、減速するのか、世界からも注目された。
 通常、私たち国際NGOは、自国でメガFTA交渉会合が開催される場合、国内の様々な組織をまとめ国内的な周知に努めると同時に、海外から交渉会合ウォッチにやってくるNGOや研究者とともにアクションやセミナーを開催する。今回、日本の市民社会にその役が回ってきたのである。
実は二〇一五年六月、京都でRCEP交渉会合が持たれたことがある。しかし当時は今以上に認知度が低く、政府の発信もほとんどなかったため市民社会の関与はゼロだった。TPP交渉会合が日本で開かれたことはない。つまり私たちにとってもホスト国の市民社会となることは事実上、初めての経験なのだ。神戸会合まで約二か月しかない中、私たちは市民団体や農民団体、労働組合などに呼びかけて、「RCEPに対する国際市民会議(PECR:People's Economic Cooperation in the Region)」というネットワーク組織を立ち上げた。「PECR(ペクル)」とは「RCEP」を逆から読んだユニークな名前である。以降、神戸・大阪のメンバーと一緒に様々な企画準備を進めていった。
 
中国主導というミスリード
 RCEPの是非を評価する前に、RCEPにはTPPとまったく異なる構図と意味があることを理解する必要がある。
 神戸会合には、一六カ国から合計六〇〇~七〇〇名もの交渉官が訪れていた。サリーを纏うインドの女性、イスラム教のヒジャブはマレーシアやインドネシア。ガラム煙草やスパイスの香り、様々な言語。会場に出入りする交渉官とすれ違う度に、文化や宗教、そして経済発展の度合いも、TPPをはるかに超える多様性・多元性をRCEPが持つことを実感する。事実、一六カ国の経済指標は大きな開きがある。中国、日本などの経済大国をはじめオーストラリア、韓国などの先進国が含まれる一方、最も貧しい後発開発途上国(LDC)やインドネシア、フィリピンなどの中所得国も参加する。LDCとは、国連経済社会理事会が所得水準、健康や就学率、経済的脆弱性などを基準に定義する国々で、現在、世界で四八カ国が該当する。RCEP参加国の中ではラオス、カンボジア、ミャンマーだ。例えばラオスでは一日一.九〇ドル未満(年間約七万六〇〇〇円)で生活する「絶対的貧困層」は、全人口六五〇万人のうち過半数もいるといわれる。内陸国で山岳面積が七〇%以上、メコン川が交通・物流の主な手段であり、水道や道路、保健・教育などの整備もこれからだ。こうした国と、日本など先進国との経済格差はあまりに大きい。
 TPPが米国中心であった一方、RCEPは「中国主導」とよく比較される。しかし、様々な情報や各国NGO、交渉官と話す中で得られる印象は、決してRCEPを主導するのは中国ではないということだ。
ここには二つの意味がある。RCEPの原点は、二〇一一年一一月、インドネシア・バリ島で開催された第一九回ASEANサミットにおいて、アジア広域経済圏の構想として出された提案である。つまりRCEPの提唱者はASEAN(特にASEAN事務局を置くインドネシアのイニシアティブが大きい)という点が重要だ。それ以前に中国や日本がRCEPにつながる構想を打ち出していたことも事実だが、いずれにしてもASEANのこの提案がなければRCEP交渉はスタートできなかった。その背景には、米国主導のTPPによってASEANが分断されるという危機感があったといわれている。ここで重要なのが、ASEANの「中心性」(centrality)という概念だ。交渉の中でも、ASEANの結束はそれなりに堅く、まさに一六カ国の「ハブ」の役割として、日中韓印豪NZの六カ国に対峙しているというのが基本的な構図だ。実際、LDCや低所得国の中には、二~三カ月に一度もある会合に交渉官を派遣する資金に苦しむ国もあるため、大国の都合で交渉が進まないよう結束する必要もある。日本にいる私たちは、米国や中国などの経済大国に意識は向いても、ASEANという枠組みを認識することは少ないが、RCEPにおいては最も主要なアクターの一つなのである。
 「中国主導」がミスリードであるもう一つの側面は、日本やオーストラリア、ニュージーランド、韓国のイニシアティブである。これらの国はTPP参加国あるいは米国とFTAを締結済みの国である。言い換えれば、TPPや韓米FTAの強い自由化水準を「すでに了解した」国である。RCEPにはもともと、「加盟国間の能力と国家体制の大きな差異を認識して協力できる基礎を提供する」「各国間の開発格差を縮小し相互利益の最大化を目指す」など、ある種の互恵性や柔軟性が基本方針に盛り込まれている。つまりTPPほどの高い自由化水準は少なくとも初期段階では目指されていない。ところがTPPの雲行きが怪しくなる中で、「TPPグループ」の国々は、TPPと同じ内容をRCEPにて提案するようになる。長年にわたり自由貿易協定の問題点を指摘し続けるジェーン・ケルシー教授(ニュージーランド・オークランド大学)は、直近のTPPグループ国の動きをこう語る。
「日本や韓国などいくつかの国は、TPPの条文案をRCEP交渉にて提案しています。特にトランプ大統領がTPP撤退を表明して以降、これらの国ぐには、これまでTPPにかけた『政治的コスト』をRCEPで取り戻そうと必死になっているのです。中には、TPPでは反対していた規定なのに、RCEPでは支持しているような国もあります」。
 ケルシー教授は、これらの国々はASEAN諸国に対しTPP水準のルールに合意するよう強い圧力をかけているとも指摘する。神戸会合直前の事前交渉にて、世耕弘成経済産業相は、「日本は開放的で質の高い貿易・投資ルールに合意することが重要というスタンスで交渉に臨んだ」と語っていることからも、その圧力がうかがえる。インドや中国はといえば、それぞれの自国の論理で鵺のように対応している印象がある。創設五〇年にあたる二〇一七年中の妥結をめざすASEANは早期合意を優先しつつも、急激で高い水準の自由化は受け入れがたい。こうした利害と思惑の中で、一五分野のうち大筋合意に達しているのはわずか二分野だけ。神戸会合でも各国の溝は埋まらず、新たに大筋合意に達した分野はないまま終わった。TPP崩壊後にRCEPが加速するのではないかという「期待」や「懸念」は、見事に外れる結果となったのだ。

RCEPで問題となっている分野
 では実際にRCEP交渉にてどのような分野が懸案となっているのか。関税交渉の他、非関税障壁つまりルールに関する分野(投資、知的所有権、サービス、電子商取引など)は広く、それだけ対立点も多い。先述のとおり交渉過程は公表されていないが、国際NGOの分析やリーク文書、海外メディアなどから読み取れる内容をまとめてみると次のようになる。
◆農産物の関税
 主要分野の一つは、農産物などの関税問題である。すでにASEANが日中韓豪印NZと締結済のFTAで決めた関税撤廃率からさらに自由化率を高めることがRCEPでの目標となっている。ASEANとFTAを結ぶ六カ国のうち関税撤廃率が際立って低いのがインドである。他の五カ国のそれが九〇%台となっているのに対し、ASEANインドFTAでは七〇%台である。インドは中国からの安い農産物が流入してくることを警戒し、関税撤廃にはかなり消極的で、そのことが関税交渉を難航化させているといわれる。

◆知的財産分野における医薬品の特許権
二〇一五年一〇月、RCEPの知的財産分野のリーク文書が公表された。ケルシー教授の指摘通り、そこには日本と韓国がTPPと同水準の特許保護を主張している。
 問題は大きく二点ある。一つは医薬品の特許期間延長だ。提案では、製薬会社が持つ薬の特許期間を現行の二〇年より五年間延長できるとある。これにより特許を持つ先発医薬品メーカーは薬価をより長く高いまま設定することができ、ジェネリック医薬品を製造できる時期は先延ばされてしまう。
 もう一つは、薬の登録に必要な臨床試験データを新薬開発メーカーが五年間独占できるという提案だ。特許が切れた薬のジェネリック版を製造したいメーカーには薬の登録が求められるが、その際に必要な臨床試験データが独占されていれば、自ら臨床試験データを集めるしかない。そこには膨大なコストがかかるため、この「データ保護規定」は事実上、ジェネリック医薬品製造を妨げる条項となる。TPPでも製薬企業の利潤を代弁する米国とその他の国の間で最も熾烈な対立となった条項であり、WTOのTRIPS協定における特許の保護規定よりも強いものである。
 これに激しく抵抗しているのは、インドおよびASEA諸国である。インドは世界有数のジェネリック医薬品製造国で、「途上国の薬局」とも呼ばれている。独立の父マハトマ・ガンジーは、「独立国家であるためには、医薬品を自国で調達できなければならない」という思想のもと、ジェネリック医薬品産業を国策として保護育成してきた。WTOでも知的所有権兼財産権強化に反対し、医薬品アクセスの必要性を訴えてきた国の一つである。「国境なき医師団」によれば、現在もインド製の安価なジェネリック版HIV治療薬によって、世界で一七〇〇万人もが治療を受けられているという。
 もし日韓の提案がRCEPで実現してしまえば、インドでのジェネリック薬製造は困難となり、それに頼る世界中の人々に深刻な打撃を与えかねない。LDCのラオス、カンボジア、ミャンマーだけでなく、例えば国内のHIV陽性患者にインド版ジェネリック薬を無償で提供しているマレーシアなど中所得国にも影響が及ぶだろう。エイズ治療薬に限らず、薬剤耐性結核やウイルス性肝炎、非感染性疾患、薬剤耐性など、新たな公衆衛生対策に不可欠なジェネリック薬とワクチンを、インドのジェネリック医薬品産業が製造してくれることを世界の貧困国は期待しているが、それらの国にも連鎖的に影響する危険がある。
 過去数十年の自由貿易促進の中で、先進国のグローバル企業の意向に沿って知的財産は強化されてきた。ジョゼフ・E・スティグリッツ教授は、「TRIPS協定は、先進国政府と大手製薬企業のためのものであり、途上国の人々への『死刑宣告』だ」と指摘している。インドなどの市民社会は、TRIPS協定よりも強く、TPP並みの知財強化を提案している日本や韓国への批判を強めており、私たちはその加害性に無関係ではいられないはずだ。

知的財産分野での「農民の種子の権利」への危機
 知的財産分野における「種子」の問題には、農民たちが強い懸念を示している。
「緑の革命」以降、アジア全体に種子企業が進出し、農民たちはその種を購入するように変容させられてきた。しかしそれでもアジアの小農民の多くは、自ら種子を保存し、自由に交換し、異なる種子をかけあわせ、次の作付をするという長い伝統を守り伝えている。実際には種子企業はアジア市場へのさらなる参入を狙っている状態だ。
 RCEP交渉のリーク文書によれば、日本と韓国が「一九九一年植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV一九九一条約)」の批准を参加国に義務づけようと提案している。同条約は、植物の新品種を「育成者権」という知的財産権として保護することが可能にする。一九九一年版の条約署名国・組織は五二のみで(日本は一九八二年に署名)、決して大半の国が署名しているわけではない。現在、世界の種子市場の六割以上がモンサントなどの大企業六社によって占められているが、UPOV一九九一年条約はそうした企業の利益に即した条約であり、企業による種子の私有化を認め、農民に経済的負担を強いるとして、中南米はじめ途上国の農民からは「モンサント条約」と批判され続けている。TPPの知的財産権章でも同条約の批准が義務付けられており、やはりTPPの内容がRCEPに持ち込まれた事例である。
 この条約の下、種子が特許で保護されてしまえば、農民は企業に特許使用料を支払わなければならない。外部供給への依存度が高まり、食料の安定供給や食料主権も脅かされることにもつながる。何よりもこの「私有化」は、アジア地域が共通にもつ「共有」(コモンズ)という概念に反し、また現時点での農民たちの現実世界とはかけ離れた制度の導入となる。

◆ISDSと途上国
 さらに、TPPでも主権を奪う大問題と批判されたISDSも、RCEPの投資章に提案されているという。またしても日韓の提案だという。
ISDSとは、投資先国の政策や法制度の変更によって「当初予定していた利益」が損なわれたと投資家がみなした場合、相手国政府を訴え、勝訴すれば多額の賠償金を得られる投資家保護のしくみだ。環境破壊や先住民族の強制移住を引き起こした大規模開発を、政府が差し止めた直後に、大企業から訴訟を起こされたケース(エクアドルやペルー)、料金高騰や水質悪化のため水道の民営化契約を継続しなかったためグローバル水道企業から訴えられたケース(アルゼンチンやボリビア)など、世界の訴訟事例は年々増加している。
投資家と国家の紛争それ自体をなくすことはできないため、何らかの解決制度は必要だ。しかしエクアドルのようにISDSによる賠償額が国家予算の三分の一にまで至り、教育や貧困対策予算をカットせざるを得ない国が出現する中で、現状のISDSのあり方が国際的にも強く問われている。
 RCEPにおけるISDSの問題はやや複雑でわかりにくいことになっている。ASEANはすでに他の六カ国(日中韓印豪NZ)との間にEPAを締結しているが、その投資章のほとんどにISDSが含まれている。またRCEP参加国の多くは、「日本―インド」「フィリピン―豪州」というように二国間投資協定やEPAを締結しているが、その多くにもISDSが含まれている。日本はニュージーランド以外の一二カ国とISDSを含む投資協定やEPAを締結済みで、日豪EPAと日比EPAは、発効時点でISDSは含まれていないが、今後の追加的な交渉の中で盛り込まれると思われる。
 すでに存在する貿易・投資協定にISDSが含まれているのであれば、RCEPでISDSが規定されても変化も影響もないと思われるかもしれない。しかし、既存のISDSよりも投資家に有利な規定を持つ中身がRCEPで導入されれば訴訟リスクは確実に高まる。過去に大企業から訴訟を起こされ、多額の賠償金を支払ってきた途上国や低所得国の市民社会は、RCEPの中にISDSが規定されれば、一六カ国共通の「使い勝手のいいツール」として普遍化し、訴訟ケースが増える危険があると導入に反対している。少なくとも公衆衛生や環境、金融規制などに関し政府がとる措置については、ISDS適用の「例外」としなければ、この懸念は拭えない。

◆「労働」や「環境」の章が存在しない
 知的財産やISDSなど、TPPでの「有害規定」がRCEPに持ち込まれているのとは対照的に、「労働」「環境」の章はRCEPにない。日本政府は「二一世紀の貿易ルールとして、TPPには環境や労働の章も入った」と喧伝していた。その内容は不十分であったと私たちは分析しているが、少なくとも本来RCEPに持ち込むべきはこれらの分野である。一度は豪州が提案したものの、中国の反対にあって交渉分野にはならなかったと報じられており、これらも先進国と途上国が対立する論点となっている。

なぜメガFTAは妥結しないのか?―新たな貿易のルールを
 二〇一〇年以降に鳴り物入りで登場した「メガFTA時代」。いくつもの巨大な交渉が同時進行で進んできたが、いずれも妥結していない。私のような自由貿易批判論者からだけでなく、政府や国会議員、財界からも、そろそろ「六年以上もメガFTAにかけてきた経済的・政治的コスト」がまったく回収できていないという観点からのとらえ返しが必要なのではないだろうか。庶民の「コスパ」感覚を見習うべきである。
メガFTAが妥結・発効できない個別の理由は当然あるが、各協定がリンクしながら自由化水準を高める装置として機能していることが大きな背景にある。各交渉経過から見えるメガFTAの「困難」は、主に次のように整理できる。
①貿易協定が関税中心だった「貿易」の枠組みを超え、サービスや金融、投資の自由化、それに伴う国内制度改革を強いる「ルール」へとシフトし、交渉範囲が非常に広くなっている。
②交渉参加国の経済発展段階や規模には大きな差があり、先進国と多国籍大企業が求める強い自由化ルールにすべての国が合意できない。特に途上国を含む場合、公衆衛生(医薬品を含む)や公共サービス、国有企業などの分野での対立が鮮明となる。
③先進国もこれまでの自由貿易推進に伴い国内産業が空洞化し雇用が海外へと流出。格差も広がっている。そのことのとらえ返しとしての自由貿易批判が各国で生じている。
④既存の投資家対国家紛争解決(ISDS)の非民主性・不公平性がどの貿易協定でも市民社会から厳しく批判されている。
⑤民主主義に反する秘密交渉についても、市民社会も国会議員からも批判が起こっている。しかもビジネス界は交渉内容にアクセスできる一方で、市民社会の多様なステークホルダーには秘密という非対称性への不満が高まっている。

 貿易そのものを否定することはできない。しかしWTOもメガFTAも矛盾と限界を露わにする中、世界は確実に次の貿易体制を模索せざるを得ない状況まで来ている。ならばこれらの課題を解決しつつ、公正で公平な貿易のフォーマットをつくることこそが求められている。
途上国は自由化を受け入れグローバル経済に適応したいと思う一方で、国内の貧困削減や医薬品アクセス、公共サービスの充実という社会開発的なゴールも目指さねばならない。この両者が対立的になっているために交渉も進まないのだ。発展段階に応じた関税率や保護政策、社会開発的な課題を解決するようなインセンティブを貿易協定の中に埋め込めないものかと常に考える。国連ミレニアム開発ゴール(SGDs)の達成を可能にするような貿易のあり方である。
様々な思想的・実践的取り組みは各国にてすでに行われている。米国ではNGOのトップランナーたちがスティグリッツやバーンスタインなどの経済学者とともに雇用や環境、公衆衛生などの価値を調和させる「新しい貿易ルール」を政策化する取り組みを大統領選前から始めている。途上国側にはWTOを改革し多角的交渉を求める主張もある。ヨーロッパではISDSの問題点を改良し、少しだけましな制度として導入し始めたところだ。インドはISDSを含む投資協定を再交渉し、外国企業も各国の国内裁判所だけに訴訟を提起するよう改正することにした。どれも試行錯誤の途中であるが、少なくともTPP型の貿易ルールは、もはやどの国も受け入れ難い協定であることは確かだ。米国のTPP離脱をめぐる経験から学ぶとしたらその点であろう。
 五点目の公開性に関して、実は神戸会合にて大きな成果があった。メガFTAの交渉会合では、ホスト国政府はビジネス界だけでなく多様な市民社会組織が参加し、交渉官に質問をし、議論を行える公開の場を設けることが常となってきた。いわゆる「ステークホルダー会合」である。神戸会合の決定後、私たちは日本政府にこの会合開催を働きかけた。日本国内だけでなく参加国のNGOなど諸団体に呼びかけ「神戸会合にてステークホルダー会合の開催を日本政府に求める国際共同書簡」を提出。わずか一週間で、一〇二団体が名を連ねた。さらに院内集会や国会議員への働きかけも行った結果、直前の告知となったものの、神戸現地でのステークホルダー会合開催に至ったのである。TPP交渉の中で政府は日本の団体向けの説明会や交渉会合時のブリーフィングは行ってきたが、メガFTA交渉会合のホスト国として国際市民社会に開かれた場を主催することは史上初めてのことだろう。小さな一歩かもしれないが、私たちの意見や懸念を直接政府に伝えていく回路ができたことは、今後の貿易交渉へ市民社会が関与しチェックしていくための道となると確信している。
「経済(エコノミー)」の語源はギリシャ語の「オイコノミア」で、「オイコス(家)」+「ノモス(法、ルール)」である。ここには家族や仲間、国や地域などの共同体のあり方を将来にわたり考えるという意味も含むという。つまり経済とは自分だけの幸せを追求するだけではなく、「どのように生きたら世の中のみんなそして将来世代が幸せになれるか」を考えることに他ならない。この原点に立ち戻れば、人々を不安にさせ苦しめる装置としての経済や貿易ではなく、人々を幸せにするルールこそが今求められている。

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